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空知で夜通し100km歩いた話

タイトルがそのままなのですが。

北海道の空知という地域にある空知単板という会社がチャリティーウォーキング(売上を寄付する)をやっており、その距離100km。走れないけど歩くなら…と興味をそそられるが、参加の仕方がわからない。

過去のTwitterfacebookを検索しても参加方法が載っておらず、数年前に参加した人の話で聞けたのは「身内・関係者のみでやっている」とのこと。

なんでだよ、おれも入れてくれよとヤキモキしながら諦めていたのですが、ある日新聞を見るとそのウォーキングのことが載っていて、「参加はこちらまで(tel番号)」と書かれている! おおっ、待つこと数年、やっと参加できるぞ!

100kw.jp

先にいくつか前提を。

自分のスペック

  • フルマラソンは完走ではなく、歩いてゴールする。だいたい4時間半
  • 開催地域(空知)から約100km離れた札幌在住
  • 週に2,3回8km程度のランニングをしている
  • 中肉中背

イベントの詳細

  • AM8時から任意スタート(競技ではないので一斉スタートが不要)
  • JR滝川駅から送迎バスが出てる
  • 赤平→芦別→歌志内→砂川→滝川→赤平 を歩く
  • イムリミットは翌日12時まで。
  • 所々にチェックポイントがある
  • スタートからゴールまで、寝ようがコンビニで買い物しようが常識の範囲でほぼ自由。
  • リタイアの救済(お迎え)はないので、リタイアしたいならチェックポイントまで来い

ということで、記憶が新鮮なうちに記録しておきます。

準備

情報収集

  • 運営に確認
    • (2週間前になっても連絡こないので)どうやって案内くるの?→1週間前にエントリーサイトからメール出します
    • 熊よけ鈴いる? →あれば良い
    • ライトいる? →あれば良い
    • そっちでFMラジオ聞ける? →聞けます
    • 送迎バスは目印ある? →係員がいるのでわかる
    • 大会Tシャツは当日買える →買えます
    • 食事は各自? →ボランティアが地域飯を出すという話もあるが、基本は各自で用意orコンビニで調達。
  • 自分で確認
    • 自宅最寄り駅から開催地までの行き方

    →途中で乗り換える場合の切符の買い方や改札の通り方を知らなかったので駅員さんに確認。

    • 移動時間

    → どうやら特急なら1時間程度で着くみたいなので、前乗りしなくて良さそう

    • youtubeで過去参加者の動画見る

    →リュックの大きさやライト有無、ポール使ってる人の割合、疲れの経過(どう変貌していくか)w

道具

  • 20Lのリュックに以下を突っ込む
    • ウィンドブレーカー(雨・寒さ対策)
    • 食料
      • カロリーメイト1箱(二個入り) 箱はゴミになるので捨てた
      • 羊羹
      • チューブ式ゼリー
    • 帽子(首を熱くしないよう、日本兵スタイルの帽子)
    • アームウォーマー(防寒)
    • タオル(終わってから汗拭く)
    • 替えの靴下(水膨れ予防&終わってから着替える)
    • 替えのシャツ(終わってから着替える)
    • 財布(電子マネー使えない時用)
    • ヘッドライト(夜通し歩くし、街灯がない区間がある)
    • ウォークマン(ラジオ。寂しくなった時用)
    • 鈴(熊よけ。百均で買った)
    • エアーサロンパス(念のため)
    • スマホ(チェックポイントで電話をかける&何かあった時に運営への連絡用)
    • モバイルバッテリー(スマホ用)
    • ランニング用のウェストポーチ(スマホと飲み物をすぐ出せるように)

重いと苦しくなるので軽量を心がけたけど、ウォークマンはあまり使わなかった。ラジオがほとんどノイズで聞こえなかったんで...

当日

ここからメインの話です...
朝4時半に起きて最寄りの駅からJRに乗り、6:28の特急に乗り換え、7時半前に滝川着。
駅の周りは市というより町の印象で、外に出たらすぐ送迎バスが見つかった。JRの時点で同じような格好の人が目につくので、ついていけば間違わない。

スタート

ゼッケンをもらうため、会場にある貼り紙の電話番号に電話をかける。
自動音声で「ゼッケン〇〇、(名前) エントリーを受け付けました」が流れて、カウンターで番号を申告して受け取る。IVR(nteractive Voice Response)っていうのか。こういう分野は知らないな... チェックポイントでも同じことをしたので、ここ(ゼッケン)でやり方を体験させるのはいい方法だと思った。 ゼッケンを受け取った後は自分の好きなタイミングで行っていい とのことで周りを見ていたら、スタートゲートの上に貼り紙があり、そこに書かれた番号に電話をかけるとスタートの受付になるらしい。 これ、便利だな...

スタートしてからはてくてく歩く。第1CP(チェックポイント)までは23km。周りには「ちょっと自分とお話ししてくるわ」と言ってたけど、24時間もお話しするほどおしゃべりではないので景色を見ながら散歩気分で歩く。朝ごはんが消化されたようでお腹が空き始め、カロリーメイトを一個使用。ゼリーを水分代わりにチビチビ吸い込む。

10kmほど歩くと看板があり、折り返し。こんな感じで、要所でQRを読んで電話をかける。

最初のチェックポイント

ここからの道のりはほぼ何もなく、念の為に鈴を装着。周りにも熊よけ鈴をつけている人がおり、チリーンと綺麗な音が聞こえる。これを効くと百均鈴のしょぼさが際立つ。

最初の看板では気づかなかったけど、コースの中では「休憩所」「チェックポイント」という言葉が混じってるので、この後から第1CP(チェックポイント)、第2CP...とする。

第1CP

炭鉱遺産。この場所のことを初めて知ったけど、特撮に出てきそうな建物がある。

この時はまだ元気。とはいえどもハーフマラソン並みの距離(23km)なのでそれなりに疲れている。

運営が言っていた「ボランティアの出店」があり、おにぎり&豚汁を頬張る。これ、豚汁と見せかけて豚肉ではなくホルモンが入っている「がんがん鍋」だそうな。豚エキスが染みてうめ〜ッ!

第1cp
余談ですが、保険会社の人がティッシュを配っていて、飴の代わりにカロリーメイトをくれたw

簡易トイレで用を足し、ボランティアさんからもらったコーラで体内の水分を入れ替えて出発! 次のCPは9km先。CPで休み続ける人・すぐに出ていく人で、ここから参加者がばらけてくる。

ここから第2CPまでの道のりは山道。トンネルの中で赤平市の境を越え、歌志内市に入る。 トンネルを超えた先には、今年北海道でやたら話題になるアイツの警告看板が出ていた。

そういえば。この区間のコンビニが一つ(セイコーマート)しかなかった。ここで止まらなかったら結構危なかったかも。
店先でガリガリくんを食べて涼をとり、帽子を被って出発
(この地域のコンビニって店内にゴミ箱があるのね。嬉しい)

第2CP

道の駅・歌志内チロルの湯(32km歩いた)

一山超えてちょっと辛くなってきたところ。持ってきたエアーサロンパスはひと吹きで無くなったので、ストレッチに専念。 疲れた体にはコーラが一番だと刃牙から教わってるので、コーラ(のようなもの)を飲み干して出発。

次の道のりは11km 足の疲労が溜まってきており、途中で見つけたドラッグストアでアンメルツを買って応急処置。

たぶんスプレーより直に効くはずの"塗るタイプ"のアンメルツヨコヨコ
何気なく見た靴の裏側が、思った以上に擦れていて傷んでいることに気づく。これは...あまり知りたくないことを知ってしまった。

第3CP

JR砂川駅の併設施設・ゆう(43km歩いた)

自分のスペックの通り、フルマラソン以上の距離はこれが初めて。立つ・座るが辛くなってきている。
エイドはバナナ(すごく嬉しい)、ドリンク(麦茶をセレクト)、お菓子で有名な砂川の名店「北菓楼」のお菓子を数点いただき、トイレでアンメルツ追加。この辺りから腰から背筋にかけて筋肉痛が出ており、塗り塗りしてた。

次の道のりは11km 日が傾き始め、夕日が綺麗。麦茶をちびちび飲みながら無心で歩く。
脳みそも「長いなぁ」「あ、前の人の距離が縮まってきた」しか考えていない。

橋上の夕暮れ

途中でセイコーマートに寄ってコーラを飲み干し(ゴミ箱があるのは本当にありがたい)出発しようとしたところ、寒い。
冗談かと思われるほどブルブルし、なんなら歯もガチガチいい始めた。とにかく温めなければとウィンドブレーカーを着込み、(走れないから)無心で腕を振りながら歩くと、1,2分ほどで回復した。汗で冷え込んでいると思われる。

第4CP

くじら館(54km歩いた)

お腹が空いていてエイドを期待していたのだけどチェックのみ。手前のコンビニ寄っておけばよかった! リュックから羊羹を取り出しエネルギー補給。寒さに備えてアームウォーマー。
ストレッチが痛くてたまらない。
普通、自分で自分の体を揉む時は「くぅ、凝ってるなぁ」だけど、このときは自分でやってるのに痛くてやめたくなる。

次の道のりは6km
アームウォーマーのお陰でブルブルは軽微で、ここからヘッドライト装着。 さっきまで11kmやってるので半分なら楽できると思ってたけど、自分の壊れ具合に気づいてなくて、遠く感じる。「(CP)まだか」「(CP)どこだ」が頭を占める。コンビニがいくつか見えるけれど、「道路の向こう側かよ」「きっともうすぐCPだ」「エイドが何かあるはず」「お金を使うなら地域の特産に落とすのだ(さっきドラッグストア行ったよな?)」と、妙な駄々をこねる。

第5CP

西出興業(60km歩いた) なんのお店かわからないけど、マットが並べられていたのでバタンと倒れ込む。とにかく足の裏と腰回りが痛いのでぐいぐい揉む。 エイドはお菓子(ブラックサンダーもらった)&コーヒー

休みながらツイッタとFBを見てると、応援の言葉が染みる。隣にいるグループがマッサージガンで和気藹々してるのを見てると、なぜかウルッとした。ややメンタルが危ないかもしれない。落ち着け。ゆっくり休もう。

次の道のりも6km
始める前から「”歩く”と”走る”は使う筋肉が違う」というのを聞いていたので、「だったら今も走れるんじゃね?」と構えてみたら、行ける。
およそ1km弱、先行していた人たちをギュンギュン抜き去った。(本当に使う筋肉が違うかも)

走りをやめて歩きに切り替えたあたりから、進行方向から帰ってくる参加者とすれ違う。え...これ、次のCPは折り返しなの?
暗闇を照らしながら出会う人々に「お疲れ様です!」と挨拶しながら進むと、次のCP・道の駅まで1kmの標識が見えてきた。

第6CP

道の駅 滝川(66km歩いた)

前のCPで飲んだコーヒーが効いているのか、妙に元気になっている。 やばい時ほどカロリーと覚醒物質は必須だと気づいた。 ここでもコーヒーと饅頭をいただき、ごはんの代わりにもう一つのカロリーメイトを頬張る。

次の道のりは12km 先ほど抜かして行った人々とすれ違い、「お疲れ様です」「もう少しでCPですよ」と声をかける。
10歳くらいの少年とすれ違った。おぃおぃ少年がこの距離歩くのかよ。

この辺りから当初の目的「自分とお話し」を始める。
思うだけでは外の刺激で簡単に吹き飛ぶので、声に出しながら「いまこんな困り事がある」「解決策は思いつく限り⚪︎点」「可能性は」「そのために必要なことは」「他にないのか」と唱える。人がいないところでやったけど、見られていたらかなりの危険人物と思われること間違いない。

途中で寄ったセイコーマートでバナナヨーグルトを飲み干し、一休みしてから歩き出すと再びあの”寒気”がくる。
今度はウィンドブレーカーを着ているのでこれ以上暖めるものが...タオルだ💡
背中とシャツの間にタオルを挟み込み、再び体を動かすと震えが止まった。 寒さを克服しライトを照らしながら歩いているとたまにモヤっとしたものが見える。どうやら自分の呼吸が白くなっているようで、フゥっと吹くと冬の朝のようなモヤができた。そりゃ体も震えるわけだ。

そろそろ10kmくらい行ったか? と思う頃に、反対側からライトの光が...また折り返しかよ!
折り返しに会う=CP通過後も同じ場所を歩く=道に変化がない のは、かなり応える。早くCP出てこい!
振り返ると空が薄明るくなっていた。

第7CP

光生舎(78km歩いた)

エイドなし(けっこう悲しい)。保険屋さんにもらったカロリーメイトを食べて、念入りに脚を揉む。

次の道のりは12km

CPに来る前に出会った人が「次が最後のコンビニ」と言ってたのを思い出し、セブンイレブンでゼリーを二個お買い上げ。ここから先はゼリーだけ。 空はさらに明るくなり、ここでヘッドライトをしまう。

たしかこの時に(もう寒くならないから)タオルも外してリュックにしまった記憶。
朝にはなってるはずだけど、雲が厚いようで日差しは辛くない。足の色々な部分に疲労が溜まり、黙々と前に進む

第8CP

いたがき(90km歩いた)

飲み物を配っていたのでお茶をセレクト。お菓子があった気がするけどゼリーがあるから大丈夫。 休み時間もそこそこに、早く終わらせたい気持ちで出発する。

ツイッタ書いててふと思ったけど、「ケリをつける」=”けり”(古文の語尾につくやつ)をつける なのか? と思いググったらやはりそうらしい。
なんかかっこいい表現だね。(むしろいままで気づかず「蹴り」だと思ってた) 

最後の道のりは10km

もうここからはできる限り休まず行く。12km行けるなら10kmくらいなんとかなるだろ という根拠の無い思い込みで歩を進める。 残りのゼリーをチビチビすすり、昨日の朝見た風景を横に見ながら「あ〜、ここからスタートしたな」とか「この先に閉校した小学校あったな」と思い起こし、ということはゴールは近いよな…と気付き力を振り絞る。コンビニも視界に入った(最後じゃなかったっけ?)けど、もう行かないと決めてたから無視。

ゴール

泣くかな と思ったらそんなこともなく、「あっ、着いた」という感じ。ゴール前で運営の人たちとハイタッチし、ゲート前でパシャ。

疲れたなぁ〜、スマホでも見て送迎バスを待つか と思っていたら関係者ぽい人に「向こうに暖房入ってる仮眠室あるよ」と言われ、向かった先は倉庫。古い世代はご存知の”ジェットヒーター”を部屋の片隅に置き、真ん中に大量のマットを敷いてごろ寝する先達のゴールした人たちの様子はさながら遺体安置所...自分も仲間入りしたけど。

替えの靴下とシャツに着替えて、持って行った荷物は全て使い切った。
送迎バスを降りたらもうJRが来る時間で、動かない体を引きづりながら階段を上り下りし、ぎりぎりで乗車。
無事に家に着いて歯ブラシ(第7CPあたりから気になって仕方がなかった)、シャワーを浴びて昼寝。

長い長い道のりを踏破した。そういえば24時間以上起きていたことも初めてかもしれない。この年でもまだまだ未経験のことばかりだ。
今回の体験は大きなことやったなぁ と思う反面...「もう絶対やらん」とも思った。

追記

5本指ソックス最強。(facebookより)

100km耐えた足